月の巡りと共に-「那須贅沢時間」番外編 「ブランディング・デザイナー 青栁 徹さん」

 月の巡りと共に-「那須贅沢時間」番外編 「ブランディング・デザイナー 青栁 徹さん」

 

 目標の設定やチャレンジに適している、新月の日。そんなエネルギーが満ちてくる時に、那須の自然におしえられながら満月化粧水「月子」を誕生させた(株)サクネス代表の澤野典子が那須周辺で素敵な生き方を紡いでいる方をご紹介する「那須贅沢時間」。今回は旧暦の新年を迎える2月を節目として、栃木市のブランディング・デザイナー青栁徹さんに会いにちょっとお出かけ。皆さんの中のスイッチを見つける旅になれば幸いです。

 

 

栃木らしさ・那須らしさ・自分らしさ

 

 お話の場は、自然の息吹きと子どもたちの賑やかな声が心地よい、下野市の天平の丘公園内の古民家を改装したシェアスペース「夜明け前」。県内外の企業、団体のブランディングやグラフィックデザインを手掛ける青栁さんもよく訪れるそう。温もり溢れる空間に身を委ね、「月子」の成長を振り返ります。

 シェアスペース夜明け前

 

青:「月子」を作ろうと思ったきっかけは。

 

私:子育てする中で「いいもの」への関心が芽生えたのが始まりですね。そして、東京、アフリカでの暮らしを経て2001年、那須町に移住。那須に来て、自分でヘチマを育てて化粧水にして使っている農家の方が強い日差しの中で農作業していても肌がきれいで。「なんていいのだろう。みんなにも伝えたい」と思ったのが商品化のきっかけですね。2010年に「月子」が誕生しました。

 

青:「いいもの」の定義はありますか。

 株式会社サクネス代表澤野典子

私:作った人の想いが詰まっているもの。利己的にならず、環境や自然のことを考えていれば自ずと「いいもの」になる。ある意味効率が悪いけれど、那須だからできることかなと。 

 

青:今、「豊かさ」「自分らしく生きる」とかが見直される中、那須ならではの商品を作られている。とてもいい商品だなぁと思います。

今後、那須らしさを生かして展開しようとしていることはありますか。

 

私:この前、隣に住むデザインナーさんと那須の「何となく程よい感が楽よね」と。

また、昔の農事歴を参考に月の満ちかけを意識して農作業を始めると自分に別の軸ができるんですよね。自分が少しずつ変わっていく生活が面白い。

その「何となく程良い感」と面白さを「月子」を入り口に知って、感じてもらえたらうれしい。コロナ禍前は種まきや採水を愛用者の皆さんに体験していただいていたので、またそういう場を持ちたいと強く思いますね。

 月子の作業

青:自分が作ったものを食べる、使う感動は体験しないと分からないですよね。

 

私:そうですね。「月子」は“人格”を持っていて、怠惰な方に行きがちな私を導いてくれる(笑)。2011年の震災の時をはじめ、何度も栽培を辞めようと思っていると後押ししてくれる人が現れる、不思議と何かが起こるんです。

 

青:なんか製品を作っているって感じじゃないですね。最終的なアウトプットが化粧品なだけで、農作業も含めて、那須という場所を共有したいっていう思いが一番なんですね。

 月子の畑

 

 「月子」の話はどんどん深掘りされて「お嫁入り」、継承の話に。そして、青栁さんが2018年から取り組む栃木県の郷土料理「しもつかれ」の再興を図る「しもつかれブランド会議(SBM)」の活動と、昨年から県と取り組む伝統工芸事業者を対象にした新商品開発支援事業に多くの共通点があることも…。

 

 

私:最近、私以外に「月子」らしさを生かして育ててくれる人が現れてほしいとも思います。

 

青:お嫁に出すってことですか。

 

私:(笑)。続けていくためには、継承も考えなきゃいけないかなって。

 

青栁 徹さん

青:残すためには引き継ぐタイミングも出てきますよね。

「しもつかれ」は海外に誇れる「栃木らしさ」「日本らしさ」だと思っています。でも存続の危機にある。伝統工芸も基本的に課題は同じ。誇るべき日本文化だけれど、現代のニーズに合わなくなってきている。

しもつかれ

長い歴史を誇るトヨタ自動車が伝統産業と言われないのは常に革新、進化しているからです。世の中の流れをみて何か生み出して、そして、バトンをつないでいかないと。

 

私:そうですよね。手離してはいけない核は大事にして、手離して良い所に新しいものを吹き込む。そこに、青栁さんみたいに違う感覚の人が入ることで刺激に。

 

青:気づきと刺激ですかね。要は切り取り方なんです。

しもつかれは食べ物ですけど、掘り下げていくと「勿体ない精神から生まれた」「シェアし合う食べ物だった」とか、その精神性が今のサステナブル、SDGsにフィットしていると気付く。その切り口から新しい企画が立てられて、戦略も変わってきます。そして今、しもつかれとファッションとかどんどん異質なものと組み合わせて新しい接点、価値観を生み出そうと挑戦しまくっています。やってみないと分からないこともありますから。

 

私:それも大事ですよね。

 

青:ロジカルに考えるのも大切ですけど、考えすぎて何も動かないのもマイナスだなと。世の中の価値観に合わせるのではなく、自分が面白いと思うことを提案する。正解不正解はない。見え方が変わっただけでしもつかれの大事な部分は何ら変わっていない。究極の判断基準は僕が楽しいか否かで良いと思うんです。

 

私:楽しいって大事ですよね。

 

青:楽しいからこそ新しいものが生まれ、人が集まって来る。

 

私:「何で私はやっているんだ」って、何か落ち込んじゃう時もありますけどね。

でも畑に行くと「楽しいなあ」「ここがなかったらどうなっていただろう」「ないと困る」「やっぱり好きだ!」って。

 

青:立ち止まって確認する作業も必要ですよね。

これからも月子さんに任せた方がいいんじゃないですかね。お聴きすると、月子さんと知らず知らずの内に問答されていて、すごく考えている。それを経て星野リゾートさんや海外にも月子さんが置かれている。すごいことじゃないですか。

 

私:母さんがボーっとしているから月子さんが連れていってくれたのかも。

停まっているのでは?と悩んでいましたけど、考えてばかりいないで今回みたいな機会、刺激を増やしていかないとですね。

 月子の種

 

その後、話題は青栁さんが取り組む那須烏山市の伝統工芸、那須楮を原料とする烏山和紙、そして、那須町にある和紙三大原料の一つ、ミツマタの群生地に。杉林の中に残るきれいなミツマタたちは、昔は和紙の材料になっていたらしいのです。もしかしたら今も活用されるのをひっそり待っているのかも…。

ヘチマから化粧水を作るという暮らしの知恵、文化も誰かが繋げなければ消えてしまう。しっかり者の月子さんが危機を感じて私を選び、私が迷った時は導き、そして今日は青栁さんと巡り会わせて新たなスイッチを入れてくれたのかもしれません。

もう少し、頑張ってみようかな。「那須らしく」「自分らしく」ゆっくり、程良く。

 

2022年2月1日。旧暦の新年が開けました。皆さんも新たな気持ちで、スイッチを入れてみませんか。

自分らしく、程良く。あ!もちろん「楽しく」。

 

 

 

株式会社あを 代表取締役 青栁 徹

https://www.facebook.com/toru.aoyagi.98

グラフィックデザイナー

JAGDA(日本グラフィックデザイナー協会)栃木代表幹事

しもつかれブランド会議 代表 http://shimotsukare.jpn.com/

地域連携教育プロジェクト oneclass 代表

(一社)Re: project 理事