月の巡りと共に-「那須贅沢時間」10巡り目 「採水」
新たな目標設定やチャレンジの始まりに適している、新月の日。そんなエネルギーが満ちてくる時に、那須の自然におしえられながら満月化粧水「月子」を誕生させた(株)サクネス代表の澤野典子が那須周辺で素敵な生き方を紡いでいる方をご紹介。あなたの中の新たなスイッチが見つかるかもしれません。
採水は月子の「那須贅沢時間」
秋の満月を迎える朝。今年も月の巡りに沿って育てられた「月子」の原材料、ヘチマ水の採水のときがやってきました。
一般的にはヘチマ水は3日ほどかけて採水しますが、月子の畑では月のエネルギーが満ちている中秋の名月の1日だけと決めています。2013年ごろからは、月子を愛用してくださる皆さんや友人や知人などに手伝っていただいています。
雨がシトシト降りてくる中、瞳をキラキラ輝かせた方々が畑近くの集合場所に続々と合流。東京、千葉など遠方からも駆け付けてくれました。ほとんどの方が初対面のはずなのに、なんだか既に同窓会のような雰囲気です(笑)。
会話が里山を賑わす中、早速、採水前の恒例、月子の畑のある「神土」を守る健武山湯泉神社にお参りに向かいます。神土は明治になり健武山湯泉神社に合祀されるまで熊野社がご安置されていたという神聖な地で、畑は平安末期から鎌倉時代ごろの記憶を残す那須町指定史跡「芦野氏居館跡」にあります。那須氏の一族・芦野氏の信仰厚き幽玄の地で月子は育っているのです。
長い石階段を上り、濡れた杉と青い苔が護る本殿に皆で採水を迎えられた感謝と祈りを伝えます。参拝を終え、振り返ると小高い丘から草木茂る神土の景色が広がります。雨で一層深さをました里山の緑を眺め、誰かがつぶやきました。
「雨の匂いがする」
深く一呼吸。
さあ、いよいよ月子のもとへ。採水作業です。
いくつかの小さな木立に囲まれた畑では、長年、採水作業を支える二人のknight(ナイト)が皆を迎えます。
ナイトの一人は、那須塩原市寺子で循環型の無農薬無化学肥料栽培を20年近く実践している山口謙一郎さん。私の「自然に近い農法で月子を育てたい」という願いを具現化してくれる守護神です。もう一人は音楽家でゴルフのレッスンプロ、そして畑の声を感じとってくれる「畑の通訳者」宮内龍己さんです。
水をためるパウチや消毒アルコールなどの道具の準備、採水方法の説明など、採水の時も毎回、サポートに加わってくれています。
今年は84本の苗が採水できるまでに成長しました。「茎を切り、切り口を消毒し、袋に差し込み、抜けないように固定する」と単純作業でも、ヘチマはそれぞれ個性があってうねり方も硬さも長さも違います。けれど皆さん2人、3人一組で協力しながら、一本一本の特性を見極め、「頑張って成長したね」「キレイなお水が出ますように」と一心に語り掛けながら作業を進めてくれました。こんなに温かい工程を経る化粧品が他にあるでしょうか。
「責任重大です」と慎重に工程を重ねていたのは都内から来た、国産精麻の普及活動や保健師としても活躍する鵜飼佳子さんと、ビーガン、オーガニックレストラン「Plus veganique自由が丘」を営む加藤良雄さん、志乃ぶさんご夫妻です。
加藤さんご夫妻は、鵜飼さんがレストランで夫のイベントを主催したことを機に、「月子」を知って気に入り、お店に置いてくださっています。加藤さんご夫妻は、採水初参加で那須町に来たことも初めてだったそうです。
良雄さん:那須は香りが良いですね。山、林の中でもまた違う香りがします。畑もカエルや虫がたくさんいて自然な感じがします。
鵜飼さん:空気感が東京と全然違いますね。
志乃ぶさん:今日は身体がすごく快適。
作業しながらも、那須、神土の特別な空気を堪能してくれたようです。
味覚でも那須の自然を堪能している方々がいました。
千葉の中村陽子さん、武井陽子さん、原亜紀子さんは今年から家庭菜園を始め、自然農法に興味が増す中、友人の紹介で初参加。ハーブにも詳しく、畑の脇で見つけた野草をパクッ。「雑味がない!」と感動の声をもらしていました。
中村さん:楽しかったです。ヘチマの栽培もやってみたくなりました。
武井さん:澤野さん夫妻からはいろんな元気をもらえますね。
こちらも初参加。自宅サロンを営んでいる栃木県小山市の松井祐子さんと茨城県結城市の堀越宏恵さんは、少女のように語り合いながら楽しんでいました。
松井さん:農業自体初めてでヘチマが土の上に転がって実ることも知らなかった。作業もしやすかったです。事前準備のおかげですね。感謝の気持ちで、一滴もこぼさないように気を付けました。
堀越さん:以前月子さんのフェイスマスクを「満月の時に使うと吸収が良いよ」と聞いて楽しみにしていたら、採水のお誘いがあったので「引き寄せられたんだ!」と感じてうれしかったです。
神聖な地『神土』にある月子の畑は「選ばれた人、呼ばれた人しか来られない」と特別感を感じてくれる方が少なくありません。
東京・代官山で美容室を開く由利眞代子さんもその一人。10年前に麻布で開かれた夫の写真展で再会して以来、ほぼ毎回採水に足を運んでくれています。美容師の視点で美容に関するアドバイスをしてくれた上、千葉県の高田造園代表、高田宏臣さんの紹介もしてくれました。
高田さんは水と空気の健全な循環の視点から里山、奥山などの環境改善と再生を図り、全国各地で実践、指導に飛び回っている土壌改良のスペシャリストです。高田さんから「今の道路のつくられ方で気脈、水脈が分断されている。でも風、水が通るように周りの環境から整えれば改善できる」と教わったことで、畑は本来の、いやそれ以上の力を発揮してくれるようになったのです。
由利さん:周りの木の表情も良くなって、お花畑まで生まれて。面白い表情をどんどんみせてくれる。この場が蘇ってきてうれしいです。
由利さんは顔をほころばせ、続けます。
由利さん:自然界の循環に沿って、しかも自然栽培で育てられたヘチマからできている「月子」さんはいろんな恵みが詰まっていると思います。成分では測れない、目に見えないものの方が大切なんじゃないかなって。
「土に触れる感覚を味わってほしい」「リフレッシュになれば」と始めた農業体験ですが、参加してくれた皆さんからいただく「目に見えないもの、栄養」の方が多いのかもしれません。
月子畑での体験を心から楽しむ姿や土に癒やされて生まれるナチュラルな笑顔、「良い製品になりますように」との願い、「来年もまたパワーをもらいに来ます」という希望に満ちた声。その全てを畑、周囲の草木、山々が吸収して、さらに豊かな表情を見せ、私たちの心を包んでくれる。私たちは改めて偉大な自然に感謝の気持ちが湧き、心を尽くすー。この循環が未来永劫に続くことを心から願わずにはいられません。
まるでお母さんが家族に作る「おにぎり」のようですよね。お母さんの愛のこもったおにぎりは、どんな料理よりも心が満たされ、元気が湧いてきます。「目に見えない栄養」がたくさん詰まっているのでしょう。
「来年も皆さんと会えるかな」「新しい出会いもあるかな」
甘えん坊の月子姫はもう今から、皆さんとの贅沢なひとときを楽しみにしているようです(笑)。