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記事: 月の巡りと共に-「那須贅沢時間」16巡り目 「那須野が原 生きものネットワーク/那須ノ菌ちゃんふぁーむ 飯沼 靖博さん」

月の巡りと共に-「那須贅沢時間」16巡り目 「那須野が原 生きものネットワーク/那須ノ菌ちゃんふぁーむ 飯沼 靖博さん」

月の巡りと共に-「那須贅沢時間」16巡り目 「那須野が原 生きものネットワーク/那須ノ菌ちゃんふぁーむ 飯沼 靖博さん」

 新たな目標設定やチャレンジの始まりに適している、新月の日。そんなエネルギーが満ちてくる時に、那須の自然におしえられながら満月化粧水「月子」を誕生させた(株)サクネス代表の澤野典子が那須周辺で素敵な生き方を紡いでいる方をご紹介。あなたの中の新たなスイッチが見つかるかもしれません。

 

風、水、土、菌、人は循環し、未来を描く

 

 那須塩原市上大貫。幹線道路から街の喧騒がまだ背に残る小さな道路沿いに、約2haの開けた農地が現れる。こんもり膨らんだ畝に陽射しが満遍なく降り注ぎ、冬の只中にも関わらず夏野菜の栽培に向けて土づくりがすでに始まっていました。畑の傍らには竹のチップが入った大きな袋が大量に並んでいます。

ここは、「那須ノ菌ちゃんふぁーむ」。「菌ちゃん」とは、有用微生物のことで、竹チップをエサに土の中の有用微生物を増やし、そのパワーで野菜を育てる農場なのです。無農薬、無化学肥料で育った野菜は味わいが力強く、本来の原始的な味を残しているように感じます。澤野家も大ファン。

代表の飯沼靖博さんは、袋の中の竹チップ触れ、語ります

 

飯沼さん

「ここを始めて約7年。『菌ちゃん農法』に出合って

5年。いまだ試行錯誤の連続です」

 

 飯沼さんは、2008年に「那須野が原生きものネットワーク」を立ち上げ、地域の水辺〝ビオトープ〟の生態調査や里山保全、間伐材を利用したペレットストーブの販売などを行っていました。農業に携わり始めたのは2012年から。「グリーンオイルプロジェクト」(セシウムを吸収し可食部に移行させないヒマワリ、ナタネなどの油脂作物を栽培し、被災農地を保全し、多様な生物の復活と被災農家の再建を支援する)の一環として、同市内の「自由学園那須農場」でヒマワリの栽培を始めた知人を手伝ったことがきっかけでした。

 

 知人は、炭素と窒素の割合を一定にして土の発酵を促して微生物の活性化を図って微生物と植物の共生関係によって健康な野菜が育てる「炭素循環農法」も実践。自然本来の形で農薬や肥料を使わない農法に飯沼さんも興味を抱き、農業の道へ。

 

 微生物の活性化にはエサとなる炭素資材が必要で、有用菌の増殖によって土が発酵されます。炭素資材にはワラや木などの硬いものや、キノコ栽培で出た廃菌床といったものがあり、その一つとして竹チップの活用に着目。竹チップは糸状菌という有用菌のエサとなる炭素分を豊富に含んでいるのです。飯沼さんは、同学園や地域の荒廃竹林の間伐を行い、搬出した竹をチップ化して土壌改良に活用するシステムを構築。約5年、国の交付金を活用し、環境学習会や里山整備活動なども行う中、父に背中を押され、現在の地で微生物、菌たちと向き合う日々が始まりました。

 

 

 菌ちゃん農法との出合いは2018年。鹿沼市で菌ちゃん農法の創始者、吉田俊道さんの講演を聴き、自然本来の循環を再現する農法、自然、野菜への思いに深く共感。何より吉田さんの「食べ物で体も、心も変わる」という想い、食育活動に感動し、翌月にはアドバイザーの試験を受けるため、吉田さんの地元長崎県に飛んで行きました。地元にも吉田さんを招き、講演会を主催。菌ちゃん農法を実践し始めた現在の農場にも来てもらい、「菌ちゃんふぁーむ」と名乗る承諾を得ることもできました。

現在は、スタッフ1名、時折奥様の力も借り、お米と約30種の野菜を育てています。

 飯沼さんの野菜たち

農場にはビニールハウスもあり、中ではカリフラワーやエンドウ豆などが並びます。マルチで被った畝の先頭に立つ木の看板には、土を仕込んだ日付と各々文字が書かれています。

 

澤野(以下、典):酵母、鉄タンニンって書いてある。

 

飯沼(以下、飯):冬場は竹チップだけではなかなか菌が動かないので、活動のきっかけになるものをいろいろ試しています。

 

典:菌が好きそうなものを探しているのね。

 

飯:マルチの色を変えたり、光や空気が取り込めるように植える位置を変えたり。毎年実験、研究を重ねている感じですね。

 

典:毎年気候も違う。それぞれ個性もあるし、子育てしているみたいよね。うちはヘチマ1種類であっぷあっぷ(笑)。根気と努力が必要よね。

 

飯:那須は寒暖差の激しい地域なので、特に冬は未だに土の中の発酵、活性化に苦労しています。炭素循環農法はブラジルが発祥で、菌ちゃん農法は長崎県。いずれも温かい地域で発酵が進みやすい環境だからこそ生まれた技術なのだなと改めて思います。

 

典:那須ならではの発酵の方法を見出さないといけないのね。発酵しているということは地温も高いのかしら。

 

飯:そうですね。この辺りを触ると分かります。

 

こんもり盛り上がった畝の辺りの土にそっと手を伸ばすと・・・。わずかな湿りと温もり。土にも〝体温〟があることを感じます。そして―

 

典:ふかふか!!柔らかいのね。

 

飯:自然に白いの(糸状菌)が張っていることもあります。

 

典:環境が良いのね。こういった農法で作られたお野菜はおいしいし、栄養価も違うのよね。

飯沼さんの畑 

飯:ミネラルなど人間が与えられないものを菌が共生して出してくれるから、味は絶対違うと思います。作物と微生物がネットワークを作り、必要な物をやり取りしてくれている。だから、僕らは「作物を作っている」感覚ではない。共生のお世話をしている感じですね。

 

  

「共生」―。

 実は、飯沼さんは農業を始める前、父の工場設備の会社を手伝っていました。継承も考えましたが、自分には合わないことが分かり、悩み、社会との関りを避けていた時期がありました。心を開いたのは、風とビオトープでした。

ある日、都内で宮崎駿監督の映画「風の谷のナウシカ」に登場する架空の飛行装置「メーヴェ」をオマージュした作品に出逢い、深い感動を覚えた飯沼さん。「僕も空を飛びたい」と宇都宮市のパラグライダー教室で練習に励み、実際に空を飛びました。 

 

「風や山。無機質な自然と向き合うことができた」

 

扉はさらに開きます。

東京ビックサイトで毎年開催される大規模環境展示会で生き物、自然環境を保全する「ビオトープ」に魅かれ、技術者の資格も取得。保全活動や調査、那須野が原公園で体験会などを行うことで自然と外に出るようになっていました。

 

 

飯:生き物の生息場所の保全するビオトープの活動が、居場所、住み家を作りたかった自分と重なり合っていった。そして、その延長線上に畑があった。

 

典:生息場所を見つけたのね。今、体験会は開いているの。

飯沼さん 

飯:今は忙しくて開催できていません。ここをどう運営していくかが、今の課題で僕たちだけの力ではなく、CSA(コミュニティ・サポート・アグリカルチャー)の導入も考え、勉強中です。農家だけではなくいろんな方に畑に入ってもらうことが農業の本来のあり方なのではないかと。それに、普段からコミュニティが築けていれば、大地震などの災害が起きたときにも迅速に助け合いの循環が生まれると思うんです。

 

典:土の中だけではなく、私たちも繋がれるのね。

 

 

少し日が傾き、私たちの尽きない話に付き合っていた菌ちゃんたちはひと休みしたそうです。畑の横に佇むアトリエに場所を移しましょう。飯沼さんは画家の顔も持っているのです。

 

典:「大日向マルシェ」のポスターの原画が見たい!

 

飯沼さんは511月那須町で定期開催されているオーガニックマルシェのシーズンポスターを手掛けています。箱から出された絵は意外に大きく、びっくり。けれど、土、空、宇宙、動物、虫、キラキラ輝くような菌ちゃんたちが一つ一つ繊細なタッチで描かれています。壮大な絵の中には、真っ直ぐな瞳の少年も。

 

子どもの頃から絵を描くことが好きだった飯沼さん。ビオトープの生態調査を深めるに伴って本格的に画家として描きはじめたそうです。

 画家の一面のある飯沼さん 

典:鮮やかな色彩、細い線や細かな点描で無限の世界、循環が描かれているのね。

 

飯:元々自分が発見したことを表現したいスタンスで、表現したくて畑を始めたのもあります。でも今は、発見がたくさんあるのにそっちの創作活動をする時間がなくて(笑)。

 

典:研究、農作業、制作が循環すると良いわね。

 

飯:そうですね。最近、初心を忘れている気がしますね。始めは、もっと地域のために「有機栽培農業のロールモデルをつくる」「今の農業と替わる農業を実現させたい」って思いがあった。一般の人を農地に呼び込んで土に触れてもらったり、何かを感じ考えてもらうきっかけにしたり。時代がバーチャルに傾倒しているからこそ、皆が自然の中で繋がっていることを実感できる場所にしたかったんですよね。

 

典:飯沼さんの絵を接点に畑に関心を持つ方も増えるかもしれませんね。

 

飯:そういう絵が描けるように頑張ります。

 

典:頑張っちゃだめ。飯沼さんなら、自然にできるわ。

  

 

微生物、菌ちゃんたちはそれぞれ個性があり、意思を持って、互いの得意を生かし合って共生し、無理なく、自然と野菜を創作してくれています。飯沼さんは絵を描くことを「そっちの」創作と言っていました。ビオトープの研究も、畑での菌ちゃんのお手伝いも、全てが「創作」であり、「協創」なのですね。

 

ナウシカは、防護マスクをしないと人間を死に至らしめる腐海の森の植物を自室の地下で育て、共生の道を探り、植物は人が蓄積した毒を浄化してくれていることを発見します。悪者扱いされていた植物たちは、人間たちが哀れな戦いを繰り返す間も健気に共生、協創を続けていたのです。

 

飯沼さんの絵の中の少年も、自然のたくましい循環と協創を曇りなき眼で見つけ、瞳を輝かせているのかもしれません。

飯沼さん

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那須ノ菌ちゃんふぁーむ

栃木県那須塩原市上大貫2034

@nasu_no_kinchan_farm

@yasuhiro_iinuma

www.bio-network.info

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